20220602~03 とびしま海道
広島へ出張と聞いた時、ふたつのことが脳裏をよぎった。




ひとつは、原爆ドームくらいしか知らない広島市内をもう少し詳しく
知りたいということ。もうひとつは、最近完成した(と聞いていた)
とびしま海道と言うサイクリングルートを走ってみたい…ということ。
広島市内散策は1日前入りすることで達成した。あちこちが点として
存在していたのだが、なんとか面で理解できるようになった。これも
歩き回った成果だろう。
そして…とびしま海道。しまなみ海道のお隣にできたルートである。
広島県呉市に端を発し、7つの島を7つの橋で結んでいる。最も知名
度が高いのは大崎下島で、ここにはかって北前船と共に栄えた御手洗
という港町があり、現在は日本遺産となって、江戸時代の賑わいを今
に伝えている。どんなルートを走るかにもよるが、出発点である呉市
仁方町から片道45キロほど。往復しても90キロ…ということは、かっ
ては一日で往復を試みた距離だが、アキレス腱切断後、初めてのロン
グツアーであり、また、御手洗などはじっくりと観たいと思い、1泊
2日の行程を組んだ。
●とびしま海道往路
●復路
6月2日(往路 呉市~御手洗)
目覚めたのは呉市広町にあるホテルの1室だった。レンタサイクルを
予約した仁方町には宿泊施設がないのである。6時に起床。朝食を済
ませ、7:53広発のJR呉線で出発。仁方には7:57に着く。ここからロ
ードバイクのレンタルを予約した倉橋サイクルまで歩く。自転車店は
すぐに見つかった。陽気なおじさんが待っていてくれた。
スーツケースを預け、ザックひとつで出発。ザックを背負って走るの
は初めてなのでちょっと緊張したが思ったよりは苦にならなかった。
倉橋サイクルから最初の橋安芸灘大橋までは国道を行く。適度なアッ
プダウンはウオームアップだ。坂道を右に曲がるとその橋は突然現れ
る。自転車は無料だが、車は有料。1,175mの橋はかなり長い。そし
て着いた島は下蒲刈島だ。橋を降り、海辺に沿って進むと石畳の美し
いエリアに出る。旧い北前船が展示されていた。そして次の橋が蒲刈
大橋(480m)。これを渡ると上蒲刈島だ。大崎下島以外の他の島々
は特に特徴はない。どれもひなびた小さな島だ。港に出ると大漁旗が
見えたり、干している昆布があったりするので人々の暮らしがあると
知るが、それ以外はのどかな島々である。
なので、ここでとびしま海道の島々とそれを結ぶ橋を一挙に紹介して
しまおう!
呉市←安芸灘大橋→下蒲刈島←蒲刈大橋→上蒲刈島←豊島大橋→豊島
←豊浜大橋→大崎下島←平羅橋→平羅島←中の背と大橋→中ノ島←岡
村大橋→岡村島となる。私はルート終点の岡村島まで走り、昼食後、
引き返して大崎下島の御手洗地区を散策し、そこに宿を取った。
御手洗地区は江戸時代、北前船の寄港地として栄えた町で、伝統的建
造物保存地区は江戸時代の面影を色濃く残していた。当時のお茶屋さ
んなども残されていた。
が、何といっても見たいのは伊能忠敬が速聴をしている図である。伊
能忠敬はこの地を測量した際、旧柴屋に宿泊した。そしてその模様を
描いた図が残されてる。実物は呉市の博物館にあるが、ここではその
レプリカを見ることができた。
また、このエリアは映画「ドライブマイカー」の撮影にも使われたと
かであちこちに赤い車の写真が貼ってあった。静かな街並みと赤い外
車の組み合わせは確かに絵になる。
宿はみはらし旅館と言う。たくさんの畳敷きの部屋が並ぶ、旧式の宿
だが、この晩、泊まっていたのは私ひとりであり、いろいろと親切に
してもらった。1匹の大ぶりな鯛の焼き物もあるのに、どっさりの肉
野菜炒めを添えてくれ、さすがに残してしまったら、翌朝、温めなお
して出してくれたが、手は付けられなかった。
●蒲刈大橋

●平羅橋

●尊敬する伊能忠敬も御手洗に来た!

●左下に伊能忠敬が。
●千砂子波止と高燈籠
●手作りの標識。足が長すぎないか?
6月3日(複路 御手洗~呉市)
さて、帰路であるが、昨日とおマジルートでは面白くない。そこで、
島の、昨日とは反対側のルートを走ることに決めた。どの島もそれほ
ど大きい訳ではないし、道は周回路なので迷う心配もない。しまなみ
海道もそうだったが、道路はほぼ平坦。唯一、橋へのアプローチだけ
が急坂で、さすがに2カ所ほどは押し歩きを余儀なくされた。
特に寄り道をするわけでもなく、上蒲刈島のであいの館で昼飯を食べ、
2時前には倉橋サイクルへ戻れてしまった。ここで自転車を返し(レン
タル料金は2日間で6千円)、店内で着替えさせてもらい、広島駅へ
出て新幹線で帰京した。自転車を持たない自転車の旅は初めての経験
だが、身軽でなかなかいい。癖になるかも…。
●蒲刈大橋遠望

●豊浜大橋
というのんびりツアーでとびしま海道を走破した。アキレス腱切断後
の初のロングツーリングだったが、不安もなく走りきれ。少しの自信
が回復した。コロナ禍以降、自転車の旅は行われていない。そろそろ
その負の歴史に終止符を打ちたい、いや、打とう!